自治体のツボ

地方分権ってどうでもいいことなんでしょうか

地方自治・地方行財政・地方創生…地方のあれこれを取り上げます

「キャシュふる」の問題提起

ふるさと納税のキャッシュバックに総務省が怒った。制度の趣旨から大きく逸脱しているというわけだ。そのとおり。迅速な対応、素晴らしい。

寄付する人は寄付を減らせちゃうし、納税者と関係ない人が返礼品をもらえちゃうし、シッチャカメッチャカ。けしからん。

と国が怒るのは当然だが、こんなサービスが生まれてくる背景はもうちょい考えてみる必要がある。この事業者は何を解決しようとしたのか。

この業者のリリースをみると、返礼品がいらない人と欲しい人をマッチングするとある。しかも、自治体もサイト手数料を減らせると強調する。

つまり制度がはらむ諸問題を解決しようとしたサービスといえる。その趣旨は理解されず、キャッシュバックによる換骨奪胎との批判が集まった。

確かにこんな豪華な返礼品はいらないから、寄付金をもう少し少なくしたいという人はいるだろう。そこはキャッシュバックで解決してあげられる。

返礼品はほしいが、納税額が少なくて恩恵を受けられない人もいる。返礼品を融通すれば、高額納税者はいいよな、という不公平感を解消できる。

自治体にもプラス。ポータルサイトに手数料ふんだくられ、寄付が減ってしまうと悩むところは多い。その財源確保をお手伝いできる。

なんだ、いいことづくめじゃないか。三方一両得みたいな話になっている。サービスとしては社会的な意義は高い。

実はそれだけふるさと納税には問題があるということだ。制度の趣旨から大きく外れたが、みんなのためにを目指したこの業者は責められない。

奇手封じには賛同するが「けしからん、プンプン」と怒るだけではいけない気がする。みんなが納得するふるさと納税。その道のりの険しさを思う。
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無風国会の成果を探す②「環境」

無風だった先の国会。意外に悪くなかったのではないかという視点で振り返るシリーズの第2弾。環境。カーボンゼロの具体策が出てきた。

目を引いたのは改正地球温暖化対策法。官民ファンドを設立し、リサイクルや森林保全を進める。ただ財政投融資を使うスキームは胡散臭い。

なんとなくスルッと通過したのだとすると、このあたり、国費の無駄遣いが心配される。悠長なことしている場合ではないのだけど。

経産省は省エネ法などを改正。非化石エネに誘導する狙いだが、こちらは脱石炭火力に一足飛びに向かわないと見られる点に難があるとされる。

政策の積み重ねを大事にする行政は一気の方向転換が不得手。再エネ活用や脱石炭のように勝負あったものは大胆に軌道修正してもよさそうだが。

続いて国交省。住宅の脱炭素武装を加速する。新築の適合基準が厳しくなるほか、改修支援や木材利用促進に努める。

すぐ施行すべきとは思うが、これはまだ時間がかかる。個人や企業の負担も重くなるし、周知徹底を図る期間が必要になるのだろう。

こうしてみると、法案をそろえた政府の姿勢は買えるものの、論戦は物足りない。お金の使い方への疑問、政策効果、時間、国民的議論。

国会が地球温暖化に本気だ、とは映らない。政治家は利益誘導の世界で生きているから、誰の得か、お金になるかに嗅覚を働かせがち。

もっと理念的なところで国を引っ張る気概があってもよい。SDGsも牽引役は民間や個人。議員も熱心かどうかで色分けしたらいい。

国の法律に各地域はどう対処するか。今度は地方行政の課題になる。もともと温暖化対策に熱心な自治体は多い。地域間競争に期待しよう。
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ヒマワリ&牛乳、父の日の定番に

今日、6月第3日曜日は言わずとしれた父の日。どうも母の日に比べ分が悪く、プレゼントの市場規模も母の日の半分の600億円程度という。

普段からあんまり親子間のコミュニケーションがないから、忘れられるらしい。が、コロナで関係が密になり、復権の兆しありとか。

注目のプレゼントだが、語呂合わせで牛乳の売り込みが盛んになっているそうだ。乳の日。いや、それは冗談きつくないか。

と思うが、最近の乳余りをここで解消しようと、生産者団体が猛アピール。愛媛県や鳥取県では酪農家が知事を訪問、消費拡大への協力を訴えた。

家畜のエサの値段も上昇中。学校での消費拡大が進まないとあっては父に頼るしかない。牛乳が定番プレゼントの酒やビールを押しのけるか。

もうひとつ、ひまわりに脚光。カーネーションへの対抗か? 館山や岩見沢、安曇野などの産地で出荷作業がピークと報道されていた。

確かに卸値も高め。大田市場では前年同期比15%ほど高い一本75円程度になった。ウクライナ応援需要もある。うちでは早速種を植えてみた。

ふるさと納税のサイトでは和牛や日本酒のPRがさかん。現に利用する人も多いだろう。お父さんが自分で寄付したりしていて。それは寂しいな。

日生のネットアンケートを見ると、プレゼントを贈るとの回答は64%。母の日より10㌽も低い。ただ鹿児島、長崎、沖縄は8割を超えている。

九州や東北は贈るとの回答が多め。関東や中部あたりは低調のようだ。普段から濃い付き合いをしておかないと、もらえるものももらえない。
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和歌山県知事の合理的な不出馬判断

和歌山県の仁坂知事が5選不出馬の意向を表明した。ちょっと意外な感じで、虚を突かれた。コロナ対応で名を上げたところだったが。

確かに高齢・多選。奥様の体調も優れないとあっては不出馬もむべなるかな。IR失敗も応えたのだろうか。

もうひとつは波乱含みの地元政局も尻込みさせた原因だ。知事ポストも巻き込まれた。有力者である二階氏を巡る揣摩臆測は絶えない。

二階氏にはふたりの息子がいるという。いずれも表舞台進出を狙っているそう。世耕氏は第2の林外相。衆院選から総理の座をうかがう。

仁坂知事は冷静沈着で、それが冷たい感じで、いかにもな官僚風の知事であったが、コロナ対応ではむしろ官僚らしく理詰めで臨む姿勢が生きた。

浮足立つ国や他の自治体と異なり、行政への信頼感を高めたと言えるだろう。県庁サイトに貼られたブログを読むと、論理的思考の持ち主とわかる。

もうひとつ、県庁は2代続いた知事辞職で揺れたが、安定した仕事ぶりで組織を引き締めた手腕は評価されてよい。

仁坂氏が知事選を制した2006年は福島、宮崎と合わせ、相次ぎ官製談合事件が表面化した年。地方行政への信頼が失墜したときだった。

関西広域連合の連合長に就くなど、まだまだやる気に見えたが、自らを取り巻く環境の厳しさを冷静に分析した結果なのだろう。
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無風国会の成果を探す①「救済」

これほど論戦の映像を見なかった通常国会はなかった。ニュースでもほとんど取り上げていなかったのではないか。波風は立たなかったのか。

新聞各紙は議論軽視の姿勢をたしなめていたが、個人的には意外にきちんと答えを出した国会だったような気がする。検証しておこう。

26年ぶりにすべて成立した政府提出法61本が多いかはともかく、特徴のひとつに「苦難に直面する人を助けた国会」が挙げられるのではないか。

こども家庭庁や公務員の育児休業強化、ターゲティング広告規制などによるネット利用者保護、虐待や貧困などに直面する若者の自立支援など。

侮辱罪厳罰化、議員立法のAV出演者救済もある。支援スキームを作るのは国だが、実際事案が起きるのは地域。自治体の目配りが重要だ。

与野党が対立しにくい案件なのかもしれないが、国や政治が個人の不安に手を差し伸べた点は評価していい。

デジタル時代になり、個人の被害は予想がつかず、罰則による抑止も追いつかない。遅まきながらでもルールの縛りができる意義は大きい。

一方、こどもの育つ環境こそ大切に育まなければ、少子化はさらにどんどん進む。少しは盛り返したい。親子を助ける子育て環境が必要だ。

何度も言うが、この先は現場である地域が大切になってくる。一人でも多く助け、力を発揮できるように後押しする。それが大人の役割だ。

目立たないことをもって岸田政権を批判する向きが強いが、それなりに仕事をしているのではないか。今国会の前向きな評価を少し続けたい。
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