東大の牧原出教授の講談社現代新書を読みました。

小泉政権は作動の観点から政治と行政をうまく動かし、安倍政権には比較的辛口なコメントをしている。民主党政権については批判一辺倒のなか、情報公開などで残した成果を強調。政権交代の意義を考えさせる。結局、第二次安倍政権は政権の維持が基本姿勢になっており、霞が関の各省も省益を追求するどこから、政権の下請けで終わっていることなのだろう。政と官の政策論争のなさが問題なのだ。

小泉首相は大統領的なトップを志向しながら、その権力の使用については抑制的であった。権力をふるったのは郵政民営化などごくわずかの政策であり、揺さぶられたのは自民党のほうだった。ところが、民主党政権と第二次安倍政権は政治主導を標ぼうし、官僚を使いこなすという発想を欠く。政策も政治の独りよがりでつくられているところがあり、官僚の力をうまく引き出すという体制になっていない。

しかし、安倍政権の何が悪いのかというところはある。景気はそれなりに持ち直した。民の生活は安定しているのである。憲法改正でもして一般国民が戦争に巻き込まれ、命を落とすようなことがあれば、問題だが、そこまで極端なことは起きていない。いま統計不正の問題発覚でアベノミクスの妥当性が問われているが、日本は平和だ。

安倍政権は政権担当能力、外交遂行能力は高いのかもしれないが、中長期的な視点で政策に取り組むという姿勢は皆無だ。少なくともはっきりとみえてこない。憲法改正に火の玉になってあたるというのなら、是非はともかく、首相の政治姿勢としては理解できる。ところが、社会保障制度改革も素通り、産業政策も場当たり。基本的に国民の反発を受けなければそれでいいという姿勢だ。

長期ゆでがえる状態に国を置いているところに問題があるのだろう。牧原先生は独立機関の行政監視や情報公開の重要性を説くが、そうした点検に値するような政策を安倍政権はもたない。大した労力もかけずに選挙に勝って、減点方式の政権運営を続ける。「政治を立て直す」というお題の前に、安倍政権をしゃきっとさせる、というお題のほうが重要なのではないか。そう感じた。



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