中央大学で長らく教鞭をとられた佐々木信夫氏の著作「元気な日本を創る構造改革」を読んだ。いままでも歯切れのよい批評にうならされてきたが、今回は大学を離れて「ホンネで持論を展開した」という。州の新設、憲法改正の論点、大阪の副首都化などなど、地方行政に対する政策提言になっており、統一地方選を間近に控えた今こそ、読むべき本と思う。

提言の柱は47都道府県の見直しである。明治以来の仕組みをここでぶっ壊して、いまの日本の国力にあわせた形に作り替えようということだ。名付けて「廃県置州」。日本ではいちど、道州制導入論議に失敗した経緯がある。変える意義が伝わらず、政治課題になりえなかった。単に都道府県のいくつかをブロックにして再編したような気になろうということだったから失敗した。

佐々木氏の提言は大都市を軸に州を創るというものである。州は広域的な行政体と位置付け、ブロックの産業政策、観光振興、エネルギー対策などを担う。行政機能の効率化を目的とするとうたうが、ただどうも47都道府県は温存されそうで、国ー州ー県ー市町村という4層構造にならないかという懸念は残る。国との権限をどう整理するかというところももっとすんなりした設計がほしい感じだ。

ただこの本の魅力は、具体的な政策提言だけでなく、政治に発破をかけている痛快さにある。政治の役割を「その時代の国のかたちを設計する」ことだとし、この数十年の統治機構改革の停滞を「政治の怠慢」と喝破するのだ。その国の国民のレベルにあわせた政治家しか生まれないというのは、よく聞く嘆きだが、有権者・国民にも耳の痛い指摘である。

無投票の当選者を生む地方政治にも警鐘を鳴らしているが、その地域に住む人が自分のこととして、将来を考えないと、日本に未来はない。農業の無策ぶりからは国民の無責任さもあぶりだしている。東京一極集中の弊害を指摘するところでは、東京とそれ以外の日本の現状を「この国はいつの間にかふたつに分かれている」と厳しく指弾した。

人口減に地方空洞化、東京一極集中。なすすべもなく立ちすくんでいていいのか。多くの知恵をめぐらし、様々な手立てを駆使すれば、何とか活路は見いだせるのではないか。現状の打開、できないことはない。地方を見渡すと暗い話が目に付くが、非常に明るい地方論。佐々木氏が問うているのはそうした気の持ちよう、心のありようである。
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