「中公新書でこういう本を出すのか」と思い手に取った。面白かった。やはりマニアの書く本はばかばかしさと真面目さとが同居していて、なんとなく笑えるからいい。

確かに県境というのはユニーク。そこをまたぐだけで享受する行政サービスが異なってしまうのだから。奈良と京都のショッピングモールなんて行ってみたい。カーナビに県境をまたぐたびに何度も県案内させたいとか面白い。日本の地域ぐらしの歴史が色濃く境の線には反映されているのもよくわかる。

自治体の職員は、だれもがこういうまちの摩訶不思議に敏感な人々であってほしいなと思う。仕事になると違うのかもしれないが、やっぱりここに住むのが好きという人に就いてほしい。そうすると、外から人を呼び込もうというときでも、地域のアピールポイントに気づきやすくなる。

そういう人は他と比較するだろう。外に目を向けつつ、厳しく自分の領地も見直す。インにこもるだけだと、どうせこんな町だからとなり、良さも見すごしてしまう。穏便に過ごそうというより、地域のいいところをひとつでも見つけてPRしよう、そんな姿勢を自治体で働く人にはもってほしい。

江戸時代のころは、となりでいいことやってんなというノウハウがあまり伝播しなかったのではないか。殿様とその周辺しか陣地を出入りしないから。いまは自由なんだから、自分のところをよくしようと思ったら、外のユニークなところにも目を向ける。だから県境の本にも目を向けてほしいのである。

面白かったと思い、あとがきを読むと、トランプ大統領の壁の話が出てきた。そうだなぁ、日本は島国だからのどか。世界を見渡せば、境が紛争の場所だったりする。県境で喜べるというのはなんて幸せなのか。浜松と飯田なんて、海外いったら本物の殺し合いだ。日本の境は愉しめていい。
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