6月恒例、政府の骨太方針が完成した。政府のいまの立ち位置、考えていることを理解するため、必読の資料といえる。読んでみた。長い。途中で飽きた。とにかく長い。今年は81ページもある。こんな分厚かったっけ? 内閣府のHPにいって調べたら、2016年は54ページ、17年は50ページ、18年は78ページだった。中身のなさを分量でカバーしたのか。

負担増を避けたというのがメディアのメーンの論評であるが、ここでは地方政策に重点をおいて骨太を読んでいこう。今年の目玉は公正取引委員会を押しのけて、乗合バスと地域銀行について一部競争政策の埒外に置く規制改革である。どうも、腑に落ちないなぁ、いまひとつ納得できないな、と思っていたところ、骨太を読んでなんとなく自分の違和感のありかがわかった。

乗合バスの共同経営と地域銀行の経営統合を認める内容だが、それぞれ地方のために必要なことというのはわかる。だが、この日本で民間企業を独禁法の外に置くということは、結構大変なことではないか。もはや地方では市場ルールが機能していないというようなものだ。もっとはっきりいえば、地方で企業経営が成り立たないということだ。

国や自治体のお金を使って、民間が無理して協力する。黒字にならない仕事を仕方がないから、地域貢献という名目で引き受ける。まだ近くで採算のあう企業が複数いればいい。だが、そういう地域って、もう競争するような相手なんていないのではないか。自分の違和感は、そんな仕事が成り立たないような地域のために、国がここまで計画経済的なことをやらねばならないのかというところにあるのだ。

長崎県は十八銀行の統合で、県内に本社を置く上場企業がゼロになった。上場していればいいというわけではないが、雇用を生んだり、外から資金を呼び込んだり、上場しているなりの民間活力、地域貢献というのはある。長崎県には非上場の有力企業もあるだろうが、投資家や市場との接点が急速に失われていくのではないか。地域経済の活力を考えるうえで、上場ゼロはあまりいいことではない。

よい規制改革だと喜べる地域はまだ間に合う。だが、骨太19を読んで「いやぁ、頼める企業がない」とかえって途方に暮れた地域も少なくないのではないか。民間活力が及ばない地方。企業のけん引力が期待できない地方。もうそういう時代になってしまったということだ。今年の骨太は地方の厳しさを改めて印象付ける、エポックメーキングな内容になったと感じた。
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