建築家の仙田満氏による「こどもを育む環境 蝕む環境」(朝日新聞出版)を読んだ。「こどもは未来」と考える著者の集大成。「環境」と銘打っているが、内容はそれにとどまらない。こどもへの愛にあふれている。こどものために何とかしてあげたいという思いが詰まった本だ。

親としてもたびたび膝を打つ思いで読ませてもらった。筆者は「こどもの頃に十分遊んだ経験のない親が増えている」と憂いている。たしかにろくな育ち方をしない子が親になったとき。。。私もどう育てていいか迷うことが多いし、ろくな育て方してない。大いに反省した。

ここで取り上げる以上は自治体への示唆である。こんなくだり、自治体関係者は耳が痛いのではないだろうか。「今まで、地方自治体の首長は、どちらかというと投票権を持つ大人に配慮し、こどものための公共投資を十分にしてこなかった」。

そこで筆者はこどもに優しい都市を評価しようと訴える。こどものために施設を作ればいいというものではないが、どうせ作るならこどものためになるような作り方をしよう。そんなヒントが満載だ。こどもが喜ぶめまいのするような遊具、ムダなしかけ。都市の中にもっとあるといいだろう。

少子化対策の必要性は頭では理解できるが、という人は多いだろう。この先、日本は高齢者ばかりの国になる。学校や幼稚園をうるさいと感じる大人は確実に増える。なんせこどもがいないのだから、接し方がわからない。未来のためとか、こどものためとか、考えられる人は減っていくのは間違いない。

筆者は国にこども省を、自治体にこども局をつくれと提言してきたという。個人的にはやりすぎだと思っていたが、確かにここまでやらないと大人は気づかないかもしれない。予算は急には増えないだろうが、縦割りをなくせば、こどものための環境づくり、どんな形であれ、進むに違いない。

こども偏重で政策を立案したい--。そんなことを言える首長、自治体を探していきたいものだ。将来を支えてくれる有望な若手はひとりでも多いほうがいい。高齢者のためにもなる。かつて「こども店長」というCMがあったが、こども大臣。いいではないか。
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