県知事と県庁所在地の市長というのは、なかなかうまくいかないものである。知事は県をたばねる実力をアピールしたがる。一方、市長は市内人口の多さをバックに力をアピールしたがる。知事からすれば、おひざ元の自治体が言うことを聞かないというのは相当腹にすえかねるようで、知事と最大市の市長が仲がいいというのはそんなに聞かない。

かつて、道路を隔てて庁舎が並立しているのに、首長同士の行き来がないと財界が嘆く県もあったそうだ。立派な高層庁舎を建てた市に知事が立腹しているという話も聞いたことがある。

神奈川県ではこんな話を聞いた。「横浜と川崎に加え、相模原まで政令市になったら、知事が力を行使できる地域はほんのわずか」。県は政令市に口出しするなと。へぇ、神奈川県知事はダムとか山間地で働くしかないんだなと思った。

さて、7月。奈良で困ったことが起きたようだ。庁舎の耐震改修を検討した奈良市に対し、奈良県知事が待ったをかけ、移転を主張したのだという。知事と市長がテーブルについて応酬するという珍しい写真を新聞で見た。結局、物別れに終わり、市が県の提案を蹴ったそうである。

いくら観光振興・まちの活性化に寄与するといわれても、市からすれば、カネのかかる移転は市民の理解を得にくいとの判断が働いたようだ。ただこの対立。割と県もはっきりものを言ったようで、暗闘するよりよかったのではないか。オープンに議論した結果の判断。ノーサイドといきたいものだ。

愛知県の対立は憲法論議にまで発展しているから、長引きそうだ。こちらも市長は割とはっきりものを言った。問題提起は理解できるが、中止要請はいかがなものかというところだろう。そこへ大阪府知事が参戦、愛知県知事に辞職勧告を突き付けた。珍しい泥仕合だ。

そういえば、大阪は府知事と市長がタッグを組んでいる。かつては「府市あわせ(不幸せ)」と言われたが、選挙で協調関係を作り上げるというのは特筆すべきことだ。ぜひ珍しい仲の良さを発揮して、こんなこともあんなこともできるという幸せな成果を見せつけてもらいたいところだ。

「うちもふたりの首長の仲が悪い」と困っている道府県があれば、ふたりを公の場に引っ張りだして公開討論させてみたらどうだろう。党首討論ならぬ、トップ討論。意外にいろいろな問題がすんなり解決するかもしれない。
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