北尾吉孝氏が率いるSBIホールディングスが地方銀行の救済事業を進めている。このほど、島根銀行に続き、福島銀行が第2弾の支援先に決まった。人口減で先行きのみえない地銀にとって、そして地方経済にとって、この動きは光明といえるのだろうか。

私には破綻間際の企業の延命策にしかみえない。現経営陣は自分の代で破綻したくないから、蜘蛛の糸にいち早くすがったようにしかみえない。最近は異業種が地銀に手を差し伸べているというが、なんのことはない。統合再編を探ったところ、同業から見放され、ほかに助ける人はいない。看板だけ残してくれたらなんでもOK、ありがとうということだ。

もし今回の提携を機に、新しいサービスを編み出せるならいい。新しい収益基盤を作れるのならいい。ただ、そこはむしろSBIがこれからどういう仕掛けを作るかということになるのだろう。もはや地銀には打つ手がないのである。地域にはたくさんの高齢者がいて、気息奄々の企業がいくらでもあるのに、地銀はビジネスの好循環をつくる起点にいられない。だからSBIに駆け込む。

金融庁の再編方針のすべてがいいわけではないが、その場しのぎでSBIに駆け込むぐらいなら、地域の金融機能を突然死させないように作り直すのが先ではないか。再編あり、専業化あり、撤退あり。その生みの苦しみを、住民への迷惑を最小限に抑えながらやる。自治体もちゃんとやらないから、SBI詣でに拍車がかかるのだ。

これは公立病院の再編論と同じだ。いまなら、地域の病院がなくなってもほかで代替できる。だが、議論もせずに先送りすると、いずれ突然地域の病院が閉鎖されて、ほかに行き場を失う住民・患者であふれるという地域が出てくるだろう。金融も同じだ。公的な色彩が強いのだから、自治体と組んで再編論議をちゃんとやるべきだろう。

SBIが新しい地銀ビジネスモデルを作り出し、傘下におさめた地銀を一色に染め直したら頼もしい。そうなったら、メガバンクも飛び越えるのではないか。いずれSBIに売り飛ばされると心配している向きもあるようだが、売り飛ばされるほどの価値があればいいが。真面目にそんなことを心配しているのなら、あまりにも呑気というほかない。
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