自動車税の軽減が税制改正の焦点に浮上してきた。自動車メーカーの負担軽減要望に、ようやく政府・与党が応える形である。少なくすれば、ユーザーは喜ぶだろう。しかし、毎度毎度こんなちまちまやっていていいのか。今回も消費増税との取引材料に使われるようだ。自動車産業をめぐる現状、地方税財政の先行きを考えると、私は自動車税は国税にしたほうがいいと思う。
地方は税収の一割にあたるそれなりの財源を手放したくないから、現状維持を求めるばかり。産業構造の変化に応じた税体系を作る意欲がない。その結果、年末の税制改正を巡る論議では税率をどういじり、一人当たりいくら負担が減るという話ばかりになる。どういう狙いでお金を集めて、何に使うのかを考えなおすべきときではないか。
化石燃料で動くクルマを前提に、あがった実入りで道路整備などを進めるというのが自動車税の意味である。でも、もう環境負荷の小さいクルマの開発が進み、電気自動車への切り替えも進む世の中である。いつまでも同じ体系でとればいいというものではない。新しい道路はいらないが、国策でEV普及などに全力をあげる方向にいくべきだ。
国税にして、より簡素な税体系にしたらどうか。自動車は取得時、保有時、走行時に税がかかるとかつて学んだ。税負担が重すぎだとメーカーもユーザーも怒る。国際水準も上回っているという。まさにとりやすいところから取るの典型だ。単なる減税ではなく、政策的な誘導にもつながる適正な負担を真剣に練るときではないか。
だから、国も実入りが増えたといって喜ぶだけではいけない。高性能のクルマの開発を促し、高効率なモビリティ社会をつくる。そうしてこそ、ユーザーも喜んで税を負担するようにする。渋滞も解消しない、事故も減らない、一向に環境対応車が出てこないでは、税負担の重さにばかり目が行く。そこの責任は国が果たすほうがよい。
地方も自動車関連は返上し、住民税・固定資産税・法人課税の三本柱にすっきりまとめることに力を使うべきだ。そして地方消費税と政策目的にあわせた目的税でやりくりする。国と地方との間では、歳出構成を踏まえ、所得税・住民税の間で税源移譲を求めたほうがいい。三位一体改革の負の教訓があろうが、つまらぬ固執より、筋論で攻めたほうが財政は安定する。損して得とれ、だ。
こういうと、経済産業省と総務省の縄張り争いに財務省が傍観、、、と、みにくい対立が話題になりそうだが、行政機関の運営は国民の理解を得てこそ。既得権益をもつ一部のヒトのためではないはずだ。簡素で中立、しかも国の競争力を高める税制を探るのは急務。地方行財政は理屈にあわせて再設計するべきだ。