今年のノーベル経済学賞受賞者であるエスター・デュフロ氏の「貧困と闘う知」を読んだ。なぜ受賞したのか、開発経済学のいまを知りたかったからである。
デュフロ氏の肝は様々な実証実験を通じて、できるだけ人々の行動を正確に把握し、政策に生かそうというところにある。人体実験をやるわけにはいかないが、奇妙な人間の行動に即して政策を作ろうというわけだ。教育支援の在り方やマイクロファイナンスのくだりは非常に勉強になった。教育はただお金をばらまくだけではだめ。教員のやる気を引き出しているか、生徒が着実に知識を身につけているか。人間はずるしたり、貧困のために落ち着いて勉強できなかったり、隠れた障害を丁寧にあぶりだし、取り除こうとしている。高利貸しはそれだけであこぎに感じるが、個人がそれを受け入れて借り入れているのなら、むしろ貸し手がいることのほうが大きいということを知った。
さて、ここで問うべきは地方分権である。汚職をなくさないことには貧困もなくならないというわけで、貧困地域では地方分権が必要と訴える。政治家を身近で直接監督できるのが大きいわけだ。コミュニティの連帯意識は生活上の難点を取り除くのに役立つ。一方で、地方政治家が居座れば、圧政という形で新たな弊害を生む。何より重要なポイントとして指摘されるのは「参加の枠組みを形成するルールの細部を考えることだ」という。女性を増やせばいいというものでもない。実効性のある地方政治を作るには、地域の意見が反映される仕組みを整えておかねばならないということだ。
開発経済学の本から日本の地方分権を考えることになるとは思わなかった。ただ発展途上国でも日本でも、地方分権が意味するところは同じなのだ。身近な地域のことは地域の人たちで決められる仕組み、納得しやすい選択を導く体制を整えるということなのだ。日本だと地方議会がだいぶ住民から遠い。日本の地方分権はせいぜいマンション理事会で機能している程度ではないだろうか。自分たちの地域のことを自分たちで話し合って結論を出す。もしくは地域の代表にきちんと地域の先行きを決めてもらう役を果たしてもらう。それは国レベルの政治とはまた別のことになる。
住みやすさの向上も貧困の解消も、取り組み方は同じ。科学的な要素を入れて、少しでもいい選択をする。人間の心理にまで踏み込んで、丁寧に地域の最適解を探るべし。デュフロ氏の主張は日本の地域のありようを考えるうえでも非常に役に立つ。さすがはノーベル経済学賞である。
デュフロ氏の肝は様々な実証実験を通じて、できるだけ人々の行動を正確に把握し、政策に生かそうというところにある。人体実験をやるわけにはいかないが、奇妙な人間の行動に即して政策を作ろうというわけだ。教育支援の在り方やマイクロファイナンスのくだりは非常に勉強になった。教育はただお金をばらまくだけではだめ。教員のやる気を引き出しているか、生徒が着実に知識を身につけているか。人間はずるしたり、貧困のために落ち着いて勉強できなかったり、隠れた障害を丁寧にあぶりだし、取り除こうとしている。高利貸しはそれだけであこぎに感じるが、個人がそれを受け入れて借り入れているのなら、むしろ貸し手がいることのほうが大きいということを知った。
さて、ここで問うべきは地方分権である。汚職をなくさないことには貧困もなくならないというわけで、貧困地域では地方分権が必要と訴える。政治家を身近で直接監督できるのが大きいわけだ。コミュニティの連帯意識は生活上の難点を取り除くのに役立つ。一方で、地方政治家が居座れば、圧政という形で新たな弊害を生む。何より重要なポイントとして指摘されるのは「参加の枠組みを形成するルールの細部を考えることだ」という。女性を増やせばいいというものでもない。実効性のある地方政治を作るには、地域の意見が反映される仕組みを整えておかねばならないということだ。
開発経済学の本から日本の地方分権を考えることになるとは思わなかった。ただ発展途上国でも日本でも、地方分権が意味するところは同じなのだ。身近な地域のことは地域の人たちで決められる仕組み、納得しやすい選択を導く体制を整えるということなのだ。日本だと地方議会がだいぶ住民から遠い。日本の地方分権はせいぜいマンション理事会で機能している程度ではないだろうか。自分たちの地域のことを自分たちで話し合って結論を出す。もしくは地域の代表にきちんと地域の先行きを決めてもらう役を果たしてもらう。それは国レベルの政治とはまた別のことになる。
住みやすさの向上も貧困の解消も、取り組み方は同じ。科学的な要素を入れて、少しでもいい選択をする。人間の心理にまで踏み込んで、丁寧に地域の最適解を探るべし。デュフロ氏の主張は日本の地域のありようを考えるうえでも非常に役に立つ。さすがはノーベル経済学賞である。