今年の年明けから、ゆっくり読み進めた本があります。渡辺京二氏の「逝きし世の面影」。いよいよ読んじゃいました。

失われた江戸・徳川文明のありようを、当時の日本を訪れた外国人の目線をたどることで浮かび上がらせている。あけすけな庶民の活気が充満している。

江戸時代というのは明確な階級社会で、農工商の人々は不自由してたんだろうなと思いきや、明るく満ち足りた生活を送っていた。

自然を愛で、動物を愛し、家族と簡素ながらも豊かな生活を送る。工業社会の強いられた生活はないのだ。役人もその一人。官が抑えつけるのではなく、地域の規律に日常生活を委ねた面があるという。

元に戻せといっても詮無い。けれども、こういう本を読むと救われる現代人は多いんじゃないかと思える。互いを大切に思い、簡素に暮らす。それで十分と思えれば、肩の力も抜ける。

追いつき追い越せでよそと比べなくてもいい。緩いながらも人々に規律を持たせるルールがあって、その範囲で自由に暮らす。わずらわしくとも暮らしやすい。

逝きし世のよさというのは、たくましく、楽しく生きる人々の活力といえようか。自然に発生する責任感が紡ぎ出す社会。地方もそう、会社もそう。なんとなく、何にこだわって生きるといいか、見えた気がする。