コロナ禍でどこの博物館もそうだろうが、双葉町の伝承館も実にきめ細かく、密状態の回避に努めていた。職員の奮闘に目が行く。ごくろうさまです。

最初のシアターに入るには整理券をもらう必要がある。入場券を購入し、しばらく待ち、指定の時間が来たら並び始める。

シアターは西田敏行さんのナレーションで始まり、復興が道半ばであること、長い年月をかけて被災地を立て直す決意が述べられる。

螺旋状にスロープをあがっていくと、展示スペースに出る。だいぶいろんな映像や映画を見たので、水素爆発すげえと思わなくなっている。よくないが。

やはり10年経つと、インパクトが薄れるのか。富岡の東電廃炉資料館のほうが迫力と自省があり、特徴的だった。

原爆と一緒で、50年も経てば、ひしゃげた道路標識も有用だろうが、まだ10年。生々しい記憶があるからへえー感を欠いてしまう。

ホテルで「311伝承ロード」というマップをもらったが、震災の記憶をとどめる施設、3県でどんどん出来ている。問題は地域性以外の違い。

どれも狙いは似ている。だから、どれかひとつかふたつみたら、非被災者は飽きる。被災者は生々しい記憶を呼び戻され、目を背けたくなるかも。

となると、誰が行くんだ?

ホープツーリズム。各施設、自治体が連携をとり、それぞれの特徴や違いを持ち寄ってアピールする工夫がいるのではないか。それが客を呼ぶ。

被災企業のことを学びたいならここ、福島ならこういう回り方、津波ならこっちとか。精緻に見る側が考えられるようなしかけがほしい。

幸い双葉町の伝承館は外部から研究者も招き、知見を深めるという。研究拠点として外に開けば、タイムリーな対応が可能だし、他との違いを出せる。

各地にできた施設、震災遺構。そこに関わる人たちがどんな意志を持って次の世代にバトンを渡そうとしているのか。その熱意が成否を分ける。
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