「安倍晋三回顧録」を読んだ。かなり赤裸々に答えていて読み応えがあった。こういう形で亡くしてしまったのは惜しい。

その時々の戦略をかなりフランクに語られている。いま説明を聞けば、なるほどと思うことが多い。表現も巧み。座談はさぞ面白かったろう。

安倍氏の関心は地方に向かない。聞かないのかもしれないが、東日本大震災や地方自治への言及は少ない。コロナでは少し意識したようだが。

出色なのは、小池都知事との関係。かなりその選挙戦術に苦い思いをしたようだが、「実務は苦手」と切り捨てた。都知事としてはいかがか。

維新との関係もあまり出てこない。自民党政権の自律に重きをおいていたから関心は薄かったのだろう。野党は敵という思いも透ける。

財務省と厚労省はこき下ろしている。特に厚労省への怒りは特筆されるべきもの。官僚はどう受け止めるか。柳に風だろうなあ。

外交を通じた日本の存在感上昇、安全保障環境の変化への対応は説得力があった。理解でき、納得できる説明だったと思う。実務的だ。

が、いかんせんお友達に弱い。権力者たるもの、利用してやろうと思う人は厳しく突っぱねないと。敵対勢力だけ突っぱねても信頼されない。

惜しむらくはその脇の甘さか。近い人にはよくても、ね。ユーモアもあるが、どこか危うさを感じさせる首相だったと思う。
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