自治体のツボ

地方分権ってどうでもいいことなんでしょうか

地方自治・地方行財政・地方創生…地方のあれこれを取り上げます

読書感想文

読書感想文「健康の経済学」

康永秀生・東大教授の「健康の経済学」を読んだ。「医療費を節約するために知っておきたいこと」が副題。図書館で見つけたが、これは買っておこう。

医療費抑えないといけませんね、とみんな思ってはいるが、逆のことばかりしているとよくわかった。エゴによる非常識も戒めないといけない。

例えば、医師のせい、という見方。薬出して儲かるわけではない。患者も悪い。CT撮ってもらわないと納得しないとか、ポリファーマシーになるとか。

医療技術の進歩は医療費を押し上げる要因、という点も改めてはっとした。米国の医療保険に学ぶことなしという切れ味もよかった。

結論は至ってシンプルで、家庭医を一人が一人持つこと、病床数の非効率の改善。無意味な規制緩和とか不要。

常々首長はなぜ社会保障の安心に全力を尽くしますと言わないだろうと思うのだが、知事や市長はもっと地域医療に責任をもたないといけない。

権限がないというのか。いや、むしろ率先して適正化を進めるよう求められているはず。筆者も都道府県が自主的に効率化・集約に取り組めと説く。

財政難で市立病院を閉鎖した夕張市。訪問診療を徹底したことで市民は幸せという事例も紹介されていた。適正な病院配置による機能集約。急げ。

ま、しかし、一番は必要になったときしか本気で考えない一般個人ということになろう。健康な時は思いをいたさない。普段から真剣に向き合いたい。
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読書感想文「コロナ危機の政治」②

さて、もう一つの問題。コロナで政府の対応にキレがなかったのは、自民党のせいではないだろうか。現場の課題を吸い上げる力が弱かった。

コロナ対応に伴う首相のミスで、政策的に大きかったのは給付金だろう。岸田政調会長に花を持たせようとした、あれだ。

ひっくり返したのは二階幹事長であり、公明党。恐らく公明党は地域の支持基盤がしっかりしている。そこからの情報が「一律配布」だったのだろう。

公明党は有権者の思いを汲み取る仕組みが機能していた。正しいかは別として、何をやれば国民が納得するか見えていた。

自民党はそこに確信があったか?民意より官僚とのすり合わせを重んじたところがなかったか。私が自民党のせいと言うゆえんだ。

官邸主導というが、何のことはない官僚優位。自民党の劣後である。党の提案が役に立たないのだから。

与党政治家は知事たちの後塵を拝した。誰もワイドショーに呼ばれない。面白くないし、現場がわかってないから。

竹中氏の書いていないことばかり書いたが、コロナでの政治の危機を言うなら、後手に回り続けた厚労省の不全、自民党の意見集約機能の劣化では。

とはいえ、時系列で丁寧な事象分析、地方の政策の評価は非常にためになる。頭の整理にもなるので、お薦めしたい。

読書感想文「コロナ危機の政治」①

竹中治堅氏の「コロナ危機の政治」(中公新書)を読んだ。副題が「安倍政権vs.知事」とあっては読まねばなるまい。

対立を煽るような内容ではなく、丁寧に起きたことを書き記す。クロニクルの体裁。冷静な筆致はとても好感を持てる。

官邸と知事の齟齬に焦点を当てたが、私自身が読みたいと思った問題意識とはズレた。確かに知事は首相の言うことを聞かなかったが。

齟齬が生じたのは、厚生労働省と自民党のせいではないか。厚労省はプロであるにも関わらず、果断かつ機敏に対処する姿勢を欠いたと思えてならない。

法律の順守に縛られ、現実への柔軟な対処が全くできなかった。だからこの本でも厚労省はあまり登場しない。

首相支配は官僚を使いこなすことで実を結ぶ。コロナでは力を出すべき厚労省が抵抗勢力になり、もしくは茫然自失となり、首相の役に立たなかった。

PCR活用や保健所の運用、検疫の強化、医療崩壊の回避、オンライン診療の導入、ワクチン開発。なに一つ主導的な力を出していない。

少なくともそう見える。ならば政治が右往左往するのも当たり前。首相もだめだったろうが、官の劣化が政の足を引っ張ったのではないか。

もう少し官邸内の力学に踏み込んでほしかった。こんな事態は初めてなんだから、官邸内で決めず、現場の意思を汲み、的確と思われる手を打つべき。

上から目線の強攻策はなんにもならない。だから地方の知事の存在が際立った。現場を持つ政治家の発言に意味があり、それが有効打になった。

官邸・政府はもっときめ細かく知事と話をしないといけなかった。空中戦で批判しあってもだめ。これは分権のせいという話ではない。政治の稚拙さだ。

問題は政府内の一体感のなさにあり、見えぬ政府に都道府県が困って、必要な手を自ら打つべく動いたということではなかったのではないだろうか。
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読書感想文「新型コロナ 収束への道」

一体、コロナはいつ収束し、コロナ前の生活に戻れるのだろう。この冬の感染は深刻なんだろうか。そうした疑問の答えを知りたくて本書を手にとった。

企業コンサル、アーサー・ディー・リトル・ジャパンの花村遼氏と田原健太朗氏による「新型コロナ 収束への道」(日本経済新聞社)。

本書によると、コロナ収束には最低2年、長期化すると5年以上という診断が説得力をもって書かれている。早期収束にはワクチンの普及が欠かせない。

だが、ウイルスが変異し、再感染が広がれば、またイチからやり直し。重症化の抑制と医療資源の確保がカギとなる。

政治は経済を回しながら感染を制御することになると見るが、制御しきれなくなれば、筆者は社会主義的経済となり、個人の主権も制限されると説く。

なるほど。中国のような国家にならざるをえないのだ。個人の行動も監視される。可能性は小さいかもしれないが、よく肝に銘じておきたい指摘だ。

当ブログとの兼ね合いでは、地方社会の活性化を筆者が求めた点が注目される。リモートワークに応える分散型社会の受け皿が必要ということだ。

比較的早期に収束すれば、地方移転が加速することはないが、大都市周辺に人が散る可能性は出てくる。自治体も人の移動に目を向けるべきだ。

こうなればこうなる、だけどこういうことも起こりうる。先行きを丁寧かつ冷静に分析し、多くの情報を的確に処理する本書。非常に勉強になりました。
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読書感想文「日本でいちばんいい県」

昨日は栃木県知事が魅力度ランキング最下位に激怒した話を取り上げた。おっしゃるとおり、どういう根拠で算出したんだとは、問いたくなるところ。

図書館でこんな本を見つけた。寺島実郎氏監修「日本でいちばんいい県 都道府県別幸福度ランキング」(東洋経済新報社)。2012年の本。

当時ブータンが世界一幸福と取り沙汰されたのだった。そこで55もの指標から独自の都道府県別ランキングを作成したのだという。日本ユニシス協力。

首位は長野県。栃木県は17位、茨城県は24位ですね。最下位は沖縄県。おおらかな土地柄とはいえ、怒らなかったのだろうか。

人口増加、県民所得、投票率、自給率、財政健全度を基本指標として評価。これに健康、文化、仕事、生活、教育を加味して順位を算出。

さすがにこれだけ精緻だとぐうの音も出まい。強みも弱みも分析され、順位が独り歩きしない配慮がある。足りない点を反省し、政策に生かすべし。

世界の指標づくりの紹介もよかった。韓国や欧州など政府が誰のために働いているかよくわかる。日本にないのは、政府が国民を見ていないからだろう。

学問的な研究では、デンマークの評価が高いそうだ。現代人の生きやすさにきめ細かく配慮しているのだろう。もっと参考にしてよい。

ランキングかくあるべし。根拠と精密さをもって作り、関係者が反省材料にできる。地域のあらがうまく際立つのがよいランキングである。
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読書感想文「土偶のリアル」

俳優のムロツヨシが数年前、自分が大河ドラマの主演をやるなら縄文時代で、と言っていたという。新聞で吉田鋼太郎氏がそう語って笑っていた。

誰が主役?土偶?と思ったものだが、そんな関心から興味を惹かれて手にとったのがこの本。「土偶のリアル」。著者は土偶に心を鷲掴みにされた女性。

東北好きの私としては、縄文時代というと青森のイメージが濃い。しかし、この本を読むと、縄文文化というのはかなり広範囲にわたったことがわかる。

一番良かったのは八戸の合掌土偶。デザインがいい。祈りを捧げているのではなく出産シーンの再現という説も。へえー。

大事なのは、おらが町の土偶を大切にする姿勢。変に飾り立てず、ゆっくり鑑賞し、その土地の歴史を味わえる展示をしてもらいたい。

考古学も地域振興には重要。遺跡見たさに人が殺到することもある。それには土地の人が自分たちの土偶に愛着を持つべきだろう。

しかし、なんのために作ったのか、どうやって使ったのかもわからない土偶。神秘。人々は他地域と交流して、モノをやり取りしていたとか。へぇー。

最もよく知られた遮光式は縄文後期にようやく出てくる。これだけ手の込んだ文化を作りながら、弥生時代はあっさりした作風に。その間、何があった?

やはり、一回大河ドラマで見てみたい気がしてきた。首長の苦悩、他地域との交流、動物との共存共栄。忘れている日本人の源流、良さを描けそうだ。
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読書感想文「女帝 小池百合子」

今頃になって、よく書店で見かけていた「女帝」を読んだ。ふうむ。政策には全く関心がなく、上昇志向あるのみ。

政治家というのは、きっちり判断してくれればよいわけで、政策通と言われる人に限って決断力なく、前例踏襲に陥りがち。

有権者は小池氏に期待しすぎて、あとではしごを外されるということなんだろう。一見よさげな政治家に見えるのだが。

この本を読むと、我々は一体、選挙で何を決めているんだろう、と思わざるをえない。もちろん候補者の全部はわからない。

本だって真実かはわからないし、当選後にいい働きをしてくれるかもしれない。この本だけで都知事たり得ずとはいえないだろうし。

それでも、しっかり候補者を吟味せず、空気に流されて、思わぬ人を選んでいるのかもしれないとは思う。それはどこの国も地域も一緒か。

これは選挙の欠陥なのか。清き一票で世の中を変えよう。言うは易し。しかし、なかなか変わらない。選挙という制度がよくないのではとさえ思う。

小池さんは友達もブレーンもいない。しかし、この人には風が起きる。よく本人を知らない人が風を起こす。その風に巻き込まれるのは良いことなのか。

スキャンダラスな一面というか、がむしゃらなキャリア形成を興味深く読んだ。こんな本が出てもラクラク再選。考えさせられたのは選挙の是非だった。
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映画感想文「はりぼて」②刮目ローカル局

つい最近東京スポーツにデーブ・スペクターが出ていた。民放キー局の改革案をぶち上げており、その1つ目が地方局の番組活用だった。なるほど。

まさに「はりぼて」をみて、その改革を早く実行したほうがいいなと思った。丁寧な調査と執拗な取材。メディアの力を感じさせる。

広島の辞職ドミノもYou Tubeで地元局の報道番組をみた。地元だけに丹念に市長ら関係者の場面を切り取ってるなと思ったものだ。

チューリップテレビは、1990年開局の新興チャンネルだそう。「正々報道」という姿勢は失われたらしいが、地道に不正を暴く姿勢が素晴らしい。

こういう独走的な報道は他社から嫌われるだろう。ただ徹底していけば、どこも追随せざるを得なくなる。そこまでトコトン。そこがポイントだ。

執拗であればいいというわけではない。質問するだけでもだめ。反権力のポーズだけでは意味がない。自ら調べ上げ、追求する姿勢が社会を変える。

最後は監督ふたりが異動・退職となって大団円。こんな終わりでいいのかな。テレビではそうならないだろう。映画だからこそのオチか。

「はりぼて」は地方議会のポンコツぶりをあらわにするだけでなく、メディアの優劣にも光を当てているような気がした。
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映画感想文「家族を想うとき」

ケン・ローチ監督の「家族を想うとき」という映画を見てきた。宅配ドライバーとして再起を図る夫と、介護士として働く妻。時間に追われ、家族が崩壊するストーリーで描かれるのは、非正規労働者の苦闘であり、共働き夫婦の苦悩だ。

私自身はゆがんだ社会を的確に描き出したという評価より、家族の再生の物語として堪能した。この父親、不況で建設会社をやめ、マイホームも手に入れ損なったところから苦闘が始まるのだが、生活保護には頑として頼るまいとする姿勢をみせた。

自治体が全然出てこない。やはり個人主義の米国だからだろうか。病院も出てくるが、これは公立なのか。貧困になりかかった家庭を公が救わない。学校が登場するが、先生は出てこない。あ、息子を補導した警官は家族の重要性を説いていた。

これでもかと家族に難題が振りかかってくる。個人を自営業者としていいように使う事業主、息子の万引、血の通わない高齢者サービスを強いられる妻、鍵っ子になる女のコ。挙げ句の果てに夫は暴漢に襲われる。救いようがない。

当ブログの関心でいうと、こういうあえぐ家庭の支援で、もう少し自治体に頑張ってほしいなあと思う。頑張る個人をどうにかして苦境から救い出す。ぎりぎりの家庭を社会全体で支えるセーフティーネットがみえない。

独り暮らしの高齢者の生活も悲惨だ。妻役の介護士が頼みの綱。みんなやり場のない怒りを介護士にぶつけてくる。ユーモアのある人はいいが、ほとんどが人間の尊厳を失いかけている。どうしてこんな社会になったのか。出るのはため息ばかり。

この映画をみた大人たちが、自分も含め、この社会をなんとかしないと、と思えたらいいのだけど。家族が大事というところは意を強くしたが、正直どこから手をつけたらいいか、わからなくなってきた。それほど救いがない。若者は絶望し、やる気を失ってしまうかなあ。
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読書感想文「23区格差」

都知事選があったんで、5年前に出た「23区格差」を読んでみた。各区の実力が多くのデータであぶり出され、おもしろかった。まち選びの目を養うことが主題だから仕方がないが、都政にどうつなげるかという視点はちょっと物足りなかった。内容に比すると、題名が堅いんじゃないかな。

いくつもの発見があった。23区で最も埋没しているのは北区だそうだ。大阪都構想でも北区問題は発生したが、確かに印象は薄い。私も拠点は山の手にあるので、北区とか板橋区とか足立区とかあんまり行かない。なじみがない。

性比という概念があるそうだ。女性を100としたときの男性の割合を示すものだ。そうか、男性より女性のほうが生き残るからこういう調べ方があるんだ。赤ちゃんは男のほうが多いとか。目黒は性比が低く、下町は高いというのはおもしろい。

都内に緑が多いという分析で、江戸時代の庭園を備えた大名屋敷が今に生きているとしたのはなるほどと思った。贅を尽くして無駄に力を誇示した大名、捨てたもんじゃないですな。街なかの植物、あれは安らぐ。

あとは江東区の埋め立て急増とか、防災の盲点は陸からの水といった指摘。そうなんだと思わせるエピソードも多かった。人口が集中する都心だが、せっかく入ってくるなら、まちの個性を踏まえて住処を選んでほしいと思う。
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