自治体のツボ

地方分権ってどうでもいいことなんでしょうか

地方自治・地方行財政・地方創生…地方のあれこれを取り上げます

読書感想文

映画感想文「はりぼて」②刮目ローカル局

つい最近東京スポーツにデーブ・スペクターが出ていた。民放キー局の改革案をぶち上げており、その1つ目が地方局の番組活用だった。なるほど。

まさに「はりぼて」をみて、その改革を早く実行したほうがいいなと思った。丁寧な調査と執拗な取材。メディアの力を感じさせる。

広島の辞職ドミノもYou Tubeで地元局の報道番組をみた。地元だけに丹念に市長ら関係者の場面を切り取ってるなと思ったものだ。

チューリップテレビは、1990年開局の新興チャンネルだそう。「正々報道」という姿勢は失われたらしいが、地道に不正を暴く姿勢が素晴らしい。

こういう独走的な報道は他社から嫌われるだろう。ただ徹底していけば、どこも追随せざるを得なくなる。そこまでトコトン。そこがポイントだ。

執拗であればいいというわけではない。質問するだけでもだめ。反権力のポーズだけでは意味がない。自ら調べ上げ、追求する姿勢が社会を変える。

最後は監督ふたりが異動・退職となって大団円。こんな終わりでいいのかな。テレビではそうならないだろう。映画だからこそのオチか。

「はりぼて」は地方議会のポンコツぶりをあらわにするだけでなく、メディアの優劣にも光を当てているような気がした。
IMG20200824111438

映画感想文「家族を想うとき」

ケン・ローチ監督の「家族を想うとき」という映画を見てきた。宅配ドライバーとして再起を図る夫と、介護士として働く妻。時間に追われ、家族が崩壊するストーリーで描かれるのは、非正規労働者の苦闘であり、共働き夫婦の苦悩だ。

私自身はゆがんだ社会を的確に描き出したという評価より、家族の再生の物語として堪能した。この父親、不況で建設会社をやめ、マイホームも手に入れ損なったところから苦闘が始まるのだが、生活保護には頑として頼るまいとする姿勢をみせた。

自治体が全然出てこない。やはり個人主義の米国だからだろうか。病院も出てくるが、これは公立なのか。貧困になりかかった家庭を公が救わない。学校が登場するが、先生は出てこない。あ、息子を補導した警官は家族の重要性を説いていた。

これでもかと家族に難題が振りかかってくる。個人を自営業者としていいように使う事業主、息子の万引、血の通わない高齢者サービスを強いられる妻、鍵っ子になる女のコ。挙げ句の果てに夫は暴漢に襲われる。救いようがない。

当ブログの関心でいうと、こういうあえぐ家庭の支援で、もう少し自治体に頑張ってほしいなあと思う。頑張る個人をどうにかして苦境から救い出す。ぎりぎりの家庭を社会全体で支えるセーフティーネットがみえない。

独り暮らしの高齢者の生活も悲惨だ。妻役の介護士が頼みの綱。みんなやり場のない怒りを介護士にぶつけてくる。ユーモアのある人はいいが、ほとんどが人間の尊厳を失いかけている。どうしてこんな社会になったのか。出るのはため息ばかり。

この映画をみた大人たちが、自分も含め、この社会をなんとかしないと、と思えたらいいのだけど。家族が大事というところは意を強くしたが、正直どこから手をつけたらいいか、わからなくなってきた。それほど救いがない。若者は絶望し、やる気を失ってしまうかなあ。
IMG20200821132616

読書感想文「23区格差」

都知事選があったんで、5年前に出た「23区格差」を読んでみた。各区の実力が多くのデータであぶり出され、おもしろかった。まち選びの目を養うことが主題だから仕方がないが、都政にどうつなげるかという視点はちょっと物足りなかった。内容に比すると、題名が堅いんじゃないかな。

いくつもの発見があった。23区で最も埋没しているのは北区だそうだ。大阪都構想でも北区問題は発生したが、確かに印象は薄い。私も拠点は山の手にあるので、北区とか板橋区とか足立区とかあんまり行かない。なじみがない。

性比という概念があるそうだ。女性を100としたときの男性の割合を示すものだ。そうか、男性より女性のほうが生き残るからこういう調べ方があるんだ。赤ちゃんは男のほうが多いとか。目黒は性比が低く、下町は高いというのはおもしろい。

都内に緑が多いという分析で、江戸時代の庭園を備えた大名屋敷が今に生きているとしたのはなるほどと思った。贅を尽くして無駄に力を誇示した大名、捨てたもんじゃないですな。街なかの植物、あれは安らぐ。

あとは江東区の埋め立て急増とか、防災の盲点は陸からの水といった指摘。そうなんだと思わせるエピソードも多かった。人口が集中する都心だが、せっかく入ってくるなら、まちの個性を踏まえて住処を選んでほしいと思う。
IMG20200713134110

映画感想文「Fukushima50」

ひっさびさに映画館で映画鑑賞。見ておきたかった「Fukushima50」に行ってきました。平日都心の館内、密にあらず。快適に見れました。面白かった。

50を全面に出しているから感動ドラマ。ケン渡辺はさすがだし、佐藤浩市の男臭い演技も堪能した。津波や爆発は映画らしい迫力があってよかった。

が、どうしてものめり込んで泣くとはいかない。無能な東電、無責任な経産省、無力な官邸と、人為的なミスに憤りを禁じ得ないから。

このあたりのだめなトライアングルは「太陽の蓋」のほうが皮肉っぽく、こちらはやや抑えめ。佐野史郎の総理はそっくりだが。

映画でも触れていたが、2号基がなぜ爆発しなかったかがわからないのもモヤモヤを残す。奇跡が起きたと結論づけてはいけない何かがあると思う。

想定外は起こりうる。それが原発事故の教訓だろう。吉田所長の手紙に語らせた「人間の慢心」。自然を甘く見た慢心。そこを肝に銘じねば。

東日本大震災に関連するものはできるだけ触れたいが、さぁ泣いてと言われても泣けない。ルポやドキュメンタリーをじっと見る方がいいかもしれない。

にしても、9年たってもまだ日本人にはやり残しの宿題があるように思えてならない。新しい地平も拓けていないし、過去にけりもつけられていない。

なんとなく過ぎてしまう時間。そしてなんとなく癒やされてしまう。コロナ危機もそうやってなんとなく消化されていくのだろうか。
IMG20200629154247

読書感想文「未来の地図帳」

「未来の地図帳」(講談社現代新書)を読んだ。すでに「未来の年表」も読んだが、都道府県の将来はどうなるのか興味深い。人口減少の行く先。気づきをまとめておきたい。

詳細なデータ分析で地域の人口がどのようにどこまで減っていくかよくわかる。では処方箋はあるのか。筆者は自治体の区域に関係なく、生活しやすい、コンパクトな「王国」をつくれという。

ここまできたら、人口減少を前提に暮らしやすく、活力のある地域を作ろうということだろう。全国一律、横並びのまちづくりではなく、地域ごとにコンパクトの意味合いを探る。

縮むまちづくりで競争が起きるといい。高齢者が引っ張るまち、子育て世代ががんばるまち、企業が支えるまち、小売りがセンターにあるまち。色々やり方はあるし、地域ごとに見つけないといけない。

やはり日本の少子化対策は失敗したのだ。平成版生めよ増やせよ運動をやりきらなかったからだ。働き方改革も中途半端。この20年、がむしゃらに取り組まなかったツケなんだろう。

【未来の地図帳からの気づき】
▼自治体の住民税と固定資産税が減る
▼高齢者も便利な中心部に集中する
▼東北の仙台集中も勢いを失う
▼福岡はレディースシティ
▼女性が望むのは第3次産業
▼高齢者は交通機関の乗り降りに時間がかかる
▼医師も自治体職員も議員も足りなくなる
▼学校も少人数になる
▼市区町村も解散する

IMG20200629162746


読書感想文「日本史の内幕」

モテモテの磯田先生。本も読んでみようと思い立ち手にとったのが「日本史の内幕」。読みやすくてあっという間に読んだ。新聞連載のまとめかな。

当ブログでの関心は、歴史はどう地域振興に役立つのかという点。遺跡の意味合いとかゆるキャラの考察とか参考になる。

「家康くん」をくん付けでよべる背景も探り、浜松と静岡の意識の差をあぶり出してる。個人的には築山殿殺害の分析がおもしろかった。

古代史に重要な遺跡を道路が寸断しようとするのを止めたり、先生、なかなか政治的な活動もやられる。頼もしい。

あとは災害史。先生が追うところの庶民の生活史には欠かせないところ。東北と熊本の地震の連動とかもっと知りたい。

歴史分析はいまの地域政策を考えるうえでも重要だ。自治体関係者にはいまとつなげる視点を持ってほしい。古書店の存在意義も知れ有意義だった。

地域の郷土史研究家というのはどこにでもいるものである。自治体はその古老によく話を聞いて、アーカイブを整えるべきだ。

地震や津波で貴重な資料が失われることもあろうし、地域の記憶はまちの財産。そこには金銀以上の価値ある財宝が眠っている。
IMG20200627115338

読書感想文「超成長都市『福岡』の秘密」

札仙広福。三大都市圏に次ぐ存在として日本の成長を支えている4大都市だ。そのなかで、頭一つ抜け出した感があるのが、福岡ではないか。

「超成長都市『福岡』の秘密」を読んでみた。

筆者も指摘しているが、やはりアジアのゲートウェイという地理的・歴史的特性が大きいのではないだろうか。オープンな姿勢が強みになっている。

なんでもやってみる貪欲さが開業率首位という結果を生むのだろう。思うに、福岡を選ぶ人はたぶん福岡じゃなきゃだめということはないんじゃないか。

便利だから福岡、たまたま福岡という人が多いかもしれない。機会があったから福岡。そこが意外に重要かも。機会を提供できていることが重要だ。

他の地域は土地へのこだわりも強い。かえって動きにくい。自由に壁や境を超える。そういう人の集まりが福岡で、それが成功につながるのだろう。

筆者は経産省OB。官の思考にも触れているが、地域では官が民の邪魔をしがちだと思う。特に国は前例や組織に縛られすぎ。

自治体は地域にこだわる人がいるからいい。数年で異動してもその土地からは逃げられない。国は自治体の邪魔もするな。

ほかに学んだのは実証実験と社会実験の違い。仕組みの実装を調べるのが社会実験と。『ボルドー・メトロポール』『九州大学起業部』『SIB』もメモ。
IMG20200620162754

読書感想文「ブルーネス」

コロナ騒動にすっかり巻き込まれ、なんだか他のことを考える余裕を失っていた。自粛を強いられたにもかかわらず、全然本も読めなかったし。久々に東日本大震災のことを考えた。

東日本大震災の前後には関連した書籍を読みたくなる。今回手にとったのは伊与原新さんの「ブルーネス」(文春文庫)。熊谷達也氏の文庫とどっちにしようかなと迷いこちらをチョイス。

文系なので津波監視システムをつくる科学者の奮闘というのはちょっと取っ付きにくく、しばらく積ん読だったのだけど、読み始めたら一気だった。さわやかな読後感。

震災の記憶は生きている人にとっても無力感を感じさせるもので、そこをバネにしてさらにどう前に進むかというのが、生き続ける人の課題だと思う。この作品の登場人物も全員、震災に苦い思いを持つ。

そして、そこから立ち上がっていく姿というのは一本調子にはいかないが、回り道しながら少しずつ前を向くという、その共感できる姿が本作では描かれる。

ハッピーエンドに違和感はあるかもしれないが、震災後の生き方を描いており、個人的には文学の力を感じた。震災を乗り越え、さらに人間の可能性に期待する。それこそ小説の力だと思う。

結構、現実の科学の世界への痛撃にもなっている。研究者は縦割りになりやすい。意外に集合知を作れない。科学もそこを乗り越えないと、なんのための科学かわからなくなる。

いまも津波監視、火山の観測は様々な独創的なチャレンジがなされているということも知った。感染症でも原発でも専門家が専門家なのかよくわからなくなるところがあるが、ぜひ頑張ってほしい。

政治と官僚は「ブルーネス」を読んで、変なブレーキをかけていないか、よく自戒すべきだ。作品に登場した八丈島の総務課長のように、自治体も科学に機敏に応じる。いい本よんだ。
IMG20200616003011

読書感想文「魂でもいいから、そばにいて」

東日本大震災にちなんだ本を読みたいなと思い手にとった。前も見たような気もするが、文庫になってちょうど手頃な感じ。津波で家族を失った人たちの不思議な体験をまとめた珠玉のルポだ。

突然、元気だった近親を失うのは辛い。覚悟ができていないから。だから、こういう形で、ひとりでも多くの人が折り合いをつけて、前を向こうとしているのは立派なことだと思う。

亡くなった子供さんの家庭でNゲージは本当に勝手に動いたんだろうし、お兄さんは妹さんに挨拶に来たんだろう。おばあさんはお孫さんになくなった場面見せたんだろう。

筆者は客観性を保つため、冷静に被災者を見つめ、生きるためのストーリーとやや距離を置いた書き方をしている。好ましい書き方だが、紹介されたエピソードの数々は実体験に基づくのだと私は信じる。

私の場合、近親が亡くなると、必ずその直後に大きな虫をみる。蛾だったり、ゴキブリだったり、ハチだったり。いつもとっても大きい。だから、それは本人たちの最後の挨拶だと思ってる。

近親との別れは思いがけない衝撃を与える。何かにつかまらないと立てない。しかし、その支えは実は亡くなった人が差し伸べてくれるのではないだろうか。そうに違いない。

この本に出てくる人たちは一様に不思議な体験をしたことで、痛切な別れから立ち上がれるようになっている。我々はいつ惨事に巻き込まれるかわからない。こういう本は読んでおくものである。

読書感想文「賃上げ国家論」

日本総研副理事長の山田久氏が書いた「賃上げ立国論」を読んだ。働き方改革に注目が集まる折、ちょうど春闘のタイミングとも重なったこともあり、手に取った。

日本では賃上げなんて無理だろう、という空気が先にでがち。民間の労使はどうしても雇用を優先してしまうからだ。しかし、筆者はあえてそんな労使関係が逆に賃上げを阻んできたとみる。

生産性の高い事業をきちんと作って、ちゃんと従業員には賃金で報いる。それができないと、景気がよくなっても賃金は上昇しない。経済の好循環もないから、賃金は上がらないというわけだ。

成長のため、産業高度化のために賃上げを、ということだ。できない企業は市場から淘汰されるのもやむなし。次の仕事へ目を向けるほかない。

以上が簡単なまとめだが、当ブログの関心は「賃上げを誘導する第三者機関をつくれ」という提言だ。賃金に関する基礎統計を準備し、賃上げの理想的な水準を示す。さらに必要な政策も示すイメージだ。

首相が「3%上げよ」と根拠なく労使に迫るより断然説得力が出よう。労使も「出せ・出さない」「リストラ反対」と平行線の議論を交わすのではなく、日本経済全体のトレンドを踏まえ、会社の方向性や事業再構築の必要性を理解しあう場になるだろう。

こういう外部組織は、地方でも作ったらどうか。ブロック単位ぐらいが望ましいが、自治体ごとに作ってもいいはずだ。なにより好調な企業を増やし、実入りのいい個人を増やせれば、税収も増える。

経済政策を官民でもっと論じたらいいのだ。都道府県や市町村の経済政策はあまりに力不足。自治体のお金は効果的に配分しないといけない。地域の弱点を見つけ、必要な手立てを講じる。

そんな「●●県経済浮揚会議」といったものが全国にできるといい。地元経済を知る地域在住の研究者、地方銀行、地元大企業経営者、地元中小企業代表らで組織する。首長も必ず出席する。

働き場所の確保、企業の育成、輸出促進策の検討など。地元企業の実入りを増やし、住民の懐も増やす。そういう会議体があれば、ぜひのぞいてみたいものだ。

ということで、働き方改革は企業の成長力を高め、やりがいのある仕事にゆとりをもって取り組めるようにしなければ意味がない。本書から賃上げできる環境・機運ができてくるといい。IMG20200318120028
ギャラリー
  • 地方目線で新閣僚を点検すると…
  • 自民党の国取り合戦を眺める
  • 安倍政権の総務相を振り返る
  • 震災9年半③福島被災者、決断のとき
  • 震災9年半②復興と五輪は切り離しを
  • 震災9年半①復興卒業へのレール
  • 地銀経営、ガバナンスに難あり
  • 100年目の国勢調査はネット回答で
  • 尼崎ラブホ定義変更にいらぬ心配