いまミドルクラスとされる人たちは本当に大変なのである。自分が若い時は結構な仕打ちを受けてきたのに、さて、いざ自分が権力をもったら強権発動を封じられる。部下に優しく接し、ひとりでも辞めさせないことが重要任務。もとより職場で暴力を振るうのはもってのほかだが、だれもなにも言わなくてもひとつの方向にむかって走るという会社の常識はいまや世間の非常識となり、家庭の事情や心の不調を持つ人のために気配りをしないといけない。働き方改革が強いる自己犠牲。ミドルはその真っただ中にいる。

今回読んだ「管理職のオキテ」は公務員向けに働く気構えを平易に説いたものである。ターゲットは課長。役所や自治体の課長に向けてのメッセージが満載である。そのどれをとっても、実は民間企業にも当てはまる。上に書いたとおり、組織で苦労している全ミドル向けのマニュアルともいえる。「全公務員必読」とうたっているが、「団塊ジュニアのミドル必読」と書き換えてもいいのではないか。

課長はコーチ、と書く通り、まずは組織が求める働きがいままでとは変わるとの認識を持てと迫る。やりたいことをやればいいというのではない。組織を円滑に動かすために身を粉にせよというわけだ。ここが割り切れるかどうかが非常に重要なのだと思う。プレイングマネージャーは格好いいが、仕事の技能が伝承されるわけでなく、人も育たない。監督として勝利という大目的に向かって組織を動かす、そこの意識を持つことが重要と説く。

優秀な部下を持った上司は幸いである。しかし、いまやどこの組織もそんなエース級は少ないだろう。そうすると、いかに中間層の働き手をなだめすかし、ときに叱咤し、戦力に仕立て上げていくか。その技量が課長には求められるのだ。本書はそこを強調する。アリの世界はよく働く上位2割、中間の6割、働かない2割に分けられるそう。この6割への目配りが欠かせない。しかも、この6割、いつ下位2割に転落してもおかしくない。子育てなどでやむなくそうなる人も多い。難しい時代に入った。

本書のような課長が増えれば、組織全体の不満は少なく、前向きに仕事をする空気が出てくるのではないか。やるべきことをはっきりさせ、ゴールに向かって効率的に進む。管理職としての力の発揮は次の仕事の舞台を広げることにも役立つだろう、ただ組織のごたごたをまとめるばかりだと、課長もつらくなる。課長だってやりたいようにやりたい。新しいことをしたい。そんなときに支えてくれる理解ある部下がいるといい。自分にそんなかけがえない後輩がいるか。考えさせられた。

筆者は官僚として日々調整に奔走し、豊富な地方経験も持っている。そうした過去の経験をふんだんに盛り込んだ本書は、働き方改革を強いられる中で、組織をひとつにまとめ、しっかりと成果を出すのはどうしたらよいかに悩む人におススメである。
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